02-09-2;感染 アレルギー
感染症
- 人の呼吸器は1日約1万リットルの異物や病原微生物を含んだ空気を吸いこんでいるので、最も感染を起こしやすい臓器である。
かぜ
- 鼻腔から喉頭までの非特異的カタル性炎症である。
- ウイルスが80〜90%、一般細菌、マイコプラズマ、クラミジア
ウイルス感染症
- ライノウイルス(30〜40%)、コロナウイルス(10%)、他にRSウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルスがある。
- 検査では急性期と回復期(約2〜4週間後)のペア血清法(4倍以上の抗体価の上昇)が一般的。
急性咽頭炎、扁桃炎
- 軽度の咽頭炎はライノウイルス(約20%)、コロナウイルス(5%)によることが多い。アデノウイルスやヘルペスウイルスは少ないが症状が重いことがある。
- 他にインフルエンザやEBウイルス、HIV急性期感染症(伝染性単核症の原因にも)のこともある。
- ウイルス以外ではA群β溶連菌が約15%、他にC群G群β溶連菌、嫌気性菌、淋菌、マイコプラズマやクラミジアがある。
急性喉頭炎
- 嗄声や咳嗽が主症状。パラインフルエンザ、ライノ、インフルエンザ、コロナなどのウイルスが原因でその他マイコプラズマ、クラミジア、A群溶連菌がある。
急性喉頭蓋炎
- ヒブが原因であることが多く(26%)、血清培養が陽性であることが多い。その他では肺炎球菌、ブドウ球菌、連鎖球菌が原因となることがある。
急性気管支炎
- インフルエンザウイルス(75〜93%)、ライノウイルス(32〜60%)、アデノウイルス(45〜90%)、他にマイコプラズマ、クラミジア、百日咳菌が原因となる。
肺炎
治療後の胸部X線
- 肺炎治療後の患者で、90日以内に1.1%、5年以内に1.7%の患者で肺がんが見つかった。
- 40歳以下の患者では、1例も肺がんは認められなかった。
- 50歳以上、男子得、喫煙の3つが関連。
- すべての肺炎患者に経過観察の胸部X線検査を行う必要はないが、肺がんのリスクの高い50歳以上の患者には検査を行い、肺がんの見逃しを防ぐことが大切である。
結核
- 2010年の推定では、世界の人口の約3分の1が結核菌に感染し、毎年880万人が結核を発病し、145万人が死亡している。発生患者の98%が発展途上国や旧社会主義諸国で、地域的にはアジアが59%、アフリカが26%を占めている。
- 日本では2010年における新登録結核患者数は2万3261人、結核罹患率は人口10万対18.2と、多くの欧米先進国の4倍以上であり、米国の1970年代の水準である。
- 新規登録患者の71.4%が60歳以上である(2014年)。最近の結核患者の20%近くが糖尿病患者である。結核患者の死亡率は1950年代と比べて現在でも10%程度であまり改善していない。新規結核患者の8.5%が基本の抗結核薬(INH,RFP,SM,EB)のいずれかに耐性を持っており、また0.4%が多剤耐性(INH,RFPの両方に耐性)である。
- 戦後減少を続けていた罹患率が1997年に43年ぶりに一時増加に転じ、1999年に「結核緊急事態宣言」を行った。2007年から結核予防法は廃止され感染症法に統合された。
- コッホ現象は1万人に1名程度。
- 初期変化群では、免疫が正常であると生涯90%は発病しない。
LTBI(潜在性結核感染症;latent tuberculosis infection)
- INHの6ヶ月間投与で、初感染者に対する発病防止効果は約50〜70%で、投与終了後少なくとも10年以上にわたり効果が持続すると言われている。
- ツ反の頃の「化学予防」でなく「LTBI治療」
- IGRA(インターフェロンγ遊離試験)は感度90%、特異度97%。(IGRAの検査結果が陰性であっても発病する場合はある;感度90%)
- 胸部X線画像上陰影が認められるのは、BCG既接種者では感染後4ヵ月以降が大部分。一方BCG未接種者や免疫不全者では感染の1〜2ヶ月後から陰影を認めることがある。
- 結核の発病は感染後2年以内であることが多い。
マイコプラズマ感染症
- 通常は重症化せずに軽快するため、過度におそれる必要はない。
- 発症は比較的緩徐、肺外症状(AST/ALTの上昇、皮疹の出現、溶血性貧血、頭痛)、初期は乾性咳嗽が目立ち徐々に湿性咳嗽へ変化、胸部聴診所見が乏しく、白血球上昇がない。
- 潜伏期間は1〜4週。典型的には2〜3週。
診断
- 寒冷凝集反応は感度特異度が低く、現在はほとんど行われていない。
- イムノカードも感度48%、特異度79%と低く、実臨床では使いにくい。
- LAMP法は2011年10月に保険収載。2時間ほど検査に要するが即座に確定診断できる。試薬以外にLAMP法専用のリアルタイム濁度測定装置が必要。
- 原則は臨床診断。診療所ではPA法やCF法による抗体検査法が第一選択。